明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ヴィム・ヴェンダース『アメリカ,家族のいる風景』


大阪上映時に見逃していたので、京都シネマに見に行く。『ランド・オブ・プレンティ』は前評判が高かったのでちょっと期待しすぎていたせいか、あまり乗れなかったけれど、これは悪くない。巨大な二つの目のような模様が、画面が明るくなって、巨大な岩場の空洞だとわかると、その前を馬に乗った男が駆けてゆくところで始まるオープニングから、「ジョン・フォード的」だという気はしていたのだが、それは主人公がB級というか、どうやらC級の西部劇俳優だからという単純な連想だけではなかったことが、最後の最後になって明らかになる。それは、サム・シェパード演じる父親が、生まれて何十年もたったあとで初めてあった息子とついに心を通わせる場面だ。その場面が、プロデューサーに見つかって撮影現場に帰らなければならなくなったサム・シェパードが、別れの言葉もかけることができずにいた息子にむかって、離れた場所から車の鍵を放り投げるというジョン・フォード的身振りによって締めくくられていることが感動的なのだ。

アメリカ、家族のいる風景