明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ロシア映画

フセヴォロド・プドフキン『脱走者』

フセヴォロド・プドフキン『脱走者』(Dezertir, 33) ★★ 『A Simple Casse』でトーキーを試みたものの果たせずに終わったプドフキンは、この『脱走者』で初のトーキー映画に成功する。「脱走者」というタイトルからつい戦争映画を想像してしまうかもしれない…

フセヴォロド・プドフキン『脳の機能』『A Simple Case』

フセヴォロド・プドフキン『脳の機能』(Mekhanika golovnogo mozga, 1926) ★ 脳神経が動物の行動に及ぼす働きを描いた純然たる科学映画。カエルから始まって、犬、猿というふうに動物生体実験の様子が描かれてゆき、そこから得られた結論から、最後に、人間…

カメラを持った男――ジガ・ヴェルトフを讃えて

5月26日(土)、神戸映画資料館にて、下記の講座を行います。連続講座「20世紀傑映画再(発)見」第4回 『カメラを持った男』──機械の眼が見た〈真実〉 http://kobe-eiga.net/program/2018/05/3913/[『カメラを持った男』は字幕のない映画として知られていま…

セルゲイ・コマロフ『メアリー・ピックフォードの接吻』

セルゲイ・コマロフ『メアリー・ピックフォードの接吻』(Potseluy Meri Pikford, 1927) ★★ 「メアリー・ピックフォードの映画にふくまれる甘いプチ・ブルジョア的毒は、健全で進歩的な観客の中にさえ残っているプチ・ブルジョア的な傾向を意図的に刺激するこ…

マヤコフスキー『女教師とごろつき』、エイゼンシュテイン『グリモフの日記』

イフゲニー・スラヴィンスキー『女教師とごろつき』(Baryshnya i khuligan, 1918) ★½ ロシア未来派の詩人ウラジミール・マヤコフスキーが脚本を書き、出演もしている短編映画。マヤコフスキーはたぶん演出にも関わったと思われる。1895年に出版されたイタリ…

ミハイル・カラトーゾフ『軍靴の中の釘』

5月26日の神戸映画資料館の連続講座:20世紀傑作映画再(発)見 第4回「『カメラを持った男』──機械の眼が見た〈真実〉」がそろそろ近づいてきたので、これから暫くの間はロシア・ソヴィエト映画強化週間になります。 ミハイル・カラトーゾフ『軍靴の中の釘』(…

アレクサンドル・メドヴェトキン『新モスクワ』――ユートピアをディストピアに変容させる曖昧な風刺

アレクサンドル・メドヴェトキン『新モスクワ』(Novaya Moskva, 1938) ★★★ 『幸福』で知られるロシアの映画監督アレクサンドル・メドヴェトキンのトーキー時代の代表作の一つ。モスクワの都市再建計画が進行中に撮られたこのシュールなコメディは、スターリ…

セルゲイ・ロズニツァについての覚書

セルゲイ・ロズニツァについての覚書 「わたしは何よりも観察者なのです。自分にとって一番重要なのは距離の問題です。キャメラを用いることによってそこに現れ、映画をかたちづくる距離が問題なのです。」(セルゲイ・ロズニツァ) セルゲイ・ロズニツァ(1…

カレン・シャフナザーロフ『ゼロシティ』『夢』

カレン・シャフナザーロフは、『ジャズメン』など数本がすでに公開されてはいるものの、あまり認知されているとは言えない。なかなかユニークな監督なので、『ゼロシティ』が日本で DVD 化されたこの機会に、軽く紹介しておこう。シャフナザーロフは 1952年…

DotDash メールマガジン第3号〜『僕の無事を祈ってくれ』

DotDash メールマガジン第3号には、ラシド・ナグマノフの『僕の無事を祈ってくれ』について書きました。カザフ・ニューウェーヴのリーダー的存在であったナグマノフが、ペレストロイカ直後の1988年のカザフスタン共和国で、韓国系ロックシンガー、ヴィ…

ボリス・バルネット『ゆたかな夏』『ノヴゴロドの人びと』

『ゆたかな夏』(Shchedroe leto, 51) そこらじゅうスターリンの写真だらけだし、まさに「スターリン」という単語が発せられるとともに終わるプロパガンダ映画なのだが、冒頭からキャメラは動き、列車は走り、車はすれ違いざまに急停止してバックし、荷車の…

グリゴーリ・コージンツェフ、レオニード・トラウベルグ『Odna』(Alone)

グリゴーリ・コージンツェフ、レオニード・トラウベルグ『Odna』(Alone) グリゴーリ・コージンツェフは、ソ連におけるハムレット映画の監督として日本でもそれなりに有名だが、それ以前に彼が撮った作品についてはほとんど紹介されていない。コージンツェフ…

エルミタージュのほうへ、ソクーロフ『旅のエレジー』

夜桜がちらほらと舞うなか、野外で薪能がおこなわれている。そこはどう見ても日本のようなのだが、終始聞こえているモノローグのなかに「日本」という言葉はでてこない。たくさんの観客が舞台を見つめているが、夜の上に、画面にはうっすらと紗がかかってい…

『宇宙を夢見て』『ベッドとソファ』『未来への迷宮』

ナナゲイに『チーズとうじ虫』を見に行く。モーニングショーなんて何年ぶりだろう。めずらしく早起きをしていったのだが、案の定、半分ぐらい爆睡してしまった。ナナゲイはいつも顔パスで入れてもらっているので、ただで見ているという気のゆるみもあったの…

ボリス・バルネット『トルブナヤ通りの家』覚書

ボリス・バルネット『トルブナヤ通りの家』★★★ナナゲイで前に見ている映画だが、そう見る機会もないと思うので、シネ・ヌーヴォでおこなわれてる「ロシア・ソビエト映画祭 in OSAKA」に見に行く。サイレント時代のコメディの傑作だ。サイレント映画なのにな…

ジガ・ヴェルトフ『レーニンの三つの歌』

ジガ・ヴェルトフ『レーニンの三つの歌』★★★レーニンの死後に完成されたドキュメンタリー。トーキー映画だが、実質的には音楽付サイレント映画に近い。全体が三つのパートに分けられ、人民がレーニンを讃える三つの歌として構成されている。第一の歌は、レー…

アレクサンドル・ロゴシュキン『ククーシュカ』

アレクサンドル・ロゴシュキン『ククーシュカ』(2002)★★ラップランドの存在を初めて知ったのは、たしか大島弓子のなにかのマンガのなかでだった。少女マンガの主人公が夢見る不思議の国。どこか遠い遠いところにある夢の国。マンガのなかにだけ存在する場…

20世紀最後の傑作〜アレクセイ・ゲルマン『フルスタリョフ、車を』

アレクセイ・ゲルマン『フルスタリョフ、車を』★★★★ この映画を見るのは今回が2回目だ。初めて見たときは、わけのわからないパワーにただただ圧倒されっぱなしだった。見ているあいだも、見終わったあとも、「これはいったい何なんだ」という巨大な疑問符が…

ソクーロフ『ファザー、サン』

アレクサンドル・ソクーロフ『ファザー、サン』★★チラシにはソクーロフの最高傑作と書いてある。客の入りがそれほど見込めないミニシアター系の作品の宣伝には、最新作のたびに「最高傑作」という文句が使われるので、今更こういう文句を信じていたわけでは…