明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

西部劇

フランク・D・ギルロイ『正午から3時まで』――事実ではなく伝説を印刷しろ!

フランク・D・ギルロイ『正午から3時まで』(From Noon Till Three, 1976) ★★ フランク・D・ギルロイが自身の小説を映画化したカルト西部劇。「撮影リュシアン・バラード」という文字に一瞬心躍るが、タイトル・バックに映し出されるいかにも作り物めいた…

リチャード・C・サラフィアン『荒野に生きる』

リチャード・C・サラフィアン『荒野に生きる』(Man in the Wilderness, 71) ★★ いささか冗長な気もするが、なかなかユニークな西部劇として記憶に残る作品。もっとも、アメリカン・ニューシネマの名作『バニシング・ポイント』の監督リチャード・C・サラ…

ゴードン・ダグラス『駅馬車』&セシル・B・デミル『スコオ・マン』

ゴードン・ダグラス『駅馬車』(Stagecoach, 66)★フォードの『駅馬車』をゴードン・ダグラスがリメイクした作品。フォード版の冒頭シーンでは、通信士の漏らす「アパッチ」のたった一言によって、物語を理解するのに必要な状況が簡潔に提示されていたわけだが…

"a fate worse than death" についての覚書――西部劇における先住民の表現についての一考察

神戸映画資料館「連続講座:20世紀傑作映画 再(発)見 第2回『駅馬車』」補足"a fate worse than death" についての覚書――西部劇における先住民の表現についての一考察 先日の神戸映画資料館での『駅馬車』についての講座を終えたあとで、あのクライマック…

アラン・ドワン『フロンティア・マーシャル』

アラン・ドワン『フロンティア・マーシャル』(Frontier Marshal, 39) ★★ 保安官ワイアット・アープのトゥームストーンでの活躍を描いた西部劇。『荒野の決闘』と同じスチュアート・N・レイクの小説を原作としているため、登場人物やエピソードはフォード作…

ウェズリー・ラッグルス『シマロン』

ウェズリー・ラッグルス『シマロン』(Cimarron, 31) ★½ 1889年のオクラホマの土地獲得競争(オクラホマ・グレート・ラン)から大恐慌の時代に至るまでの40年近い時の流れを年代記的に描いたこのスペクタクル大作を、単純に西部劇に分類していいものかどう…

マイケル・カーティズ『無法者の群』

マイケル・カーティズ『無法者の群』(Dodge City, 39) ★★ ワーナーでウォルシュと肩を並べていた冒険映画のヴェテラン、マイケル・カーティズは、エロール・フリンとコンビを組んで数々の冒険映画・海賊映画を作っている。これは、その分野ですでに成功して…

セシル・B・デミル『大平原』

セシル・B・デミル『大平原』(Union Pacific, 39) ★★ 大陸を横断する鉄道ユニオン・パシフィックとセントラル・パシフィックの建設を背景に、金儲けのためにそれを妨害する一味(一味のボスを演じるブライアン・ドンレヴィは、この年、4本の西部劇で同様の…

『砂塵』『地獄への道』

神戸映画資料館での『駅馬車』講座の日がだんだん近づいてきたので、6月は西部劇を中心に書くことにする(ただのメモに近いものだが)。 ジョージ・マーシャル『砂塵』(Destry Rides Again, 39) ★★½ 『掠奪の町』や『縄張り』などのコミカルな西部劇を得意と…

ラオール・ウォルシュ『賭博の町』

「フォードが最終的に目指すものは社会であり、ホークスの場合、それは集団(グループ)である。ウォルシュが目指すのはただただ個人──個人の体験、進歩、発展なのである」(デイヴ・カー) ラオール・ウォルシュ『賭博の町』(Silver River, 48) ★★★ 41年の…

ヒューゴー・フレゴネーズ『七人の脱走兵』54

ヒューゴー・フレゴネーズがハリウッドで撮った3本の西部劇の最後を飾る作品。かれがこの次にウエスタンを撮るのは、この約10年後で、それはドイツ人作家カール・マイの西部小説をユーゴスラヴィアで映画化したものになるだろう。だから、ある意味、この…

ヒューゴー・フレゴネーズ『Apache Drums』〜ヴァル・リュートン最後の映画〜

まだこんな西部劇の傑作が残ってたとは、アメリカ映画の奥の深さにあらためて驚かされる。この映画は日本では未公開であり、本国アメリカでもほとんど忘れ去られていたといっていい。一度見たらとうてい忘れることのできないこのような作品でさえ、嘘のよう…

リチャード・ウィルソン『Man with the Gun』

リチャード・ウィルソン『Man with the Gun』(1955) (この映画は日本でも公開されていて、「街中の拳銃に狙われる男」という邦題がついているみたいなのだが、いくらなんでもセンスがなさ過ぎる。というわけで、あえて原題を使って書くことにする。)『Ma…

No Country for Old Men〜デイヴィッド・ミラー『脱獄』

デイヴィッド・ミラー『脱獄』Lonely are the Brave (62) デイヴィッド・ミラーという監督は、日本では『ダラスの熱い日』が多少とも知られているだけで、さして評価が高いわけではない。アメリカ本国でも、オリジナリティーに欠ける凡庸な監督というのが、…

アンソニー・マン『シャロン砦』

日本版が出ることになった今頃になって、ずいぶん前に購入していながらそのままにしてあった北米版の『シャロン砦』DVD を取り出して、やっとナイロンパッケージを開封する。この DVD は、ふつうの日本製の DVDプレイヤーでは再生できないリージョン1のディ…

デルマー・デイヴィス『縛り首の木』

デルマー・デイヴィス『縛り首の木』The Hanging Tree ★★☆デルマー・デイヴィス(デイヴスとも書く)の西部劇の代表作に数えられる一本。西部劇のかたちを借りた文芸映画。リンチ映画。50年代的西部劇と60年代的西部劇の過渡期的作品。この映画を見直すのは…

デルマー・デイヴス『決断の3時10分』

デルマー・デイヴスは、これといったスタイルを持たず、その欠点を題材の新しさでカヴァーし、毎回スタイルを変えていきながら映画を撮り続けた作家である。たしかに、突出した作家ではなかったが、世代的に、また作風からいっても、ジョン・フォードやアラ…

モンテ・ヘルマンの『銃撃』『旋風の中に馬を進めろ』

モンテ・ヘルマンの『銃撃』は不思議な西部劇だ。 ずいぶん昔に見たときは、 字幕なしのフィルムだったせいで、話がよくわからなかった。今回この作品と同じくモンテ・ヘルマン作の『旋風の中に馬を進めろ』があわせてDVD化されたので、字幕付きで久しぶりに…