明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

クローネンバーグ『ヒストリー・オブ・バイオレンス』


テレンス・マリックほどではないが、最近妙に寡作になっているクローネンバーグの、前評判の高かった新作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』を見に行く。最近は、封切り作品は上映終了ぎりぎりになって見に行くことが多い。封切られた週に映画を見に行くのはひさしぶりだ。


ネタバレしそうなのであまり詳しく書かないことにするが、非常におもしろかった。シンプルで力強い物語でぐいぐいと引っ張ってゆく。クローネンバーグの最高傑作かもしれない。ファンタスティックな要素はなにもない話だが、ある意味『スキャナーズ』のラストから始まる映画と言っていいだろう。『ミュンヘン』あたりから始まっているハリウッド映画のひとつの流れとして、「アンガジェ」している作品が去年あたりから急激に増えている。この作品は直接そういう問題を扱ってはいないが、ここに9/11以後のアメリカ社会の縮図を見て取ることはたやすい。


スナック・バーかなにかから出てきたふたりが、正面に止めた車の前で、観客には脈略なく聞こえる話をしているところから映画は始まるのだけれど、その場面があまりにも長すぎるなと思い始めたところで、ははぁー、店のなかでなにかが起こったのだなとわかってしまうあたり、自分でもいやになるほど勘がいいので困ってしまう。もっと映画慣れしていなければ、素直に映画に驚けるのに、と思ったりするのだが、まあ仕方がない。