明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

リチャード・T・へフロン『未来世界』


余裕ないです。

更新してなかったわりには、アンテナ登録者数が微増している(まあ、すぐ減ると思うけど)。

ちゃんと書いてる時間がないので、どうでもいい話題を1つ。


☆ ☆ ☆


リチャード・T・へフロン『未来世界』


カルトSF映画『ウエストワールド』のあまり知られていない続編だ。

ユル・ブリンナーという俳優はどの映画に出ていても、どこか浮いている印象を与える。リチャード・ウィルソンのそれなりに興味深い西部劇『ガンファイトへの招待』では、一人だけ真っ黒なスーツを着て西部の街を歩き回る姿がいかにも場違いだった。意図はわかるが、どうも西部劇の世界にはうまく収まっていない。その彼の独特の存在感が珍しくうまくはまったのが、ロボットのガンマンを演じた『ウエストワールド』だった。

この続編『未来世界』にもユル・ブリンナーは妙なかたちで登場するのだが、基本的には脇役に徹している。主役はピーター・フォンダブライス・ダナー。

『ウエストワールド』で描かれた大惨事を受けて、セキュリティを強化したテーマパークが再オープンする。それが「フューチャー・ワールド」だ。そこの従業員から記者フォンダに、このテーマパークには恐ろしい秘密があるとのたれ込みがある。だが直後に、情報提供者は抹殺されてしまう。そこでフォンダは取材のふりをして「フューチャーワールド」内部に潜入する……。

別にたいした秘密でもないのでネタをばらすと、このテーマパークで秘密裏におこなわれていたのは、コピー人間の製造で、ここは政府要人たちのコピーを作って世界を乗っ取ろうという計画のアジトだったのだ。このコピー人間には、オリジナルの思考までそっくりコピーされている(『ウエストワールド』の時にもましてテクノロジーは進歩しているようだ)。

いつの間にか、潜入したピーター・フォンダと同僚の女性記者ブライス・ダナーのコピーも製造されてしまっていて、二人は自分のコピーと戦うことになる。面白かったのは、西部劇のセットのなかで、ブライス・ダナーが自分のコピーと対決する場面だ。『ヴェラクルス』のラストシーンよろしく、二人が向かい合う。どちらが先にピストルを抜くかという緊迫した瞬間、コピーのほうが、「バカね、あなたの考えてることは何でもわかるのよ」と言う。しかし、こっちも相手の考えていることはわかってるのだ。次の瞬間、銃声が響くが、どちらが勝ったかはわからない。

フォンダとダナーは「フューチャーワールド」から脱出することに成功する。しかし、その直前まで二人とも自分のコピーと戦っており、逃げ出した二人が本物なのか、コピーのほうなのかわからない……。

と、最後まで気をもませる。

正直、そんなたいした映画でもないとは思うが、アクションの達者なヘフロンがそつなく監督していて、最後まで飽きさせない作品だ。


(日本でもビデオが出ているようだが、見かけた記憶がない。)