明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ウジェーヌ・グリーン『ジョゼフの息子』、ベルトラン・ボネロ『ノクチュラマ』など

神戸映画資料館の連続講座が目前に迫ってきたので、なかなか更新している余裕が無い。

とりあえず、最近見た中で印象に残った映画を列挙しておく。




バート・レイノルズ『シャーキーズ・マシーン』(1981) ★★★

ベルトラン・ボネロ『ノクチュラマ』(Nocturama) ★★½

マルコ・ベロッキオ『Sbatti il mostro in prima pagina』 ★★½

ウジェーヌ・グリーン『ジョゼフの息子』(Le fils de Joseph, 2017) ★★½

フィリップ・ガレル『Actua 1』(Actua 1, 1968) ★★½

ユエン・ウーピン『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ外伝/アイアンモンキー』(Iron Monkey, 1993) ★★

イングマール・ベルイマン『Fårö dokument』(1966) ★★

マイケル・マン『刑事グラハム/凍りついた欲望』(Manhunter, 1986) ★★



ウジェーヌ・グリーンの新作は、人物を正面から切り返すあいかわらずのスタイルであまり変わりはないが、母マリー(マリア)の反対を押し切って、自分の実の父を探す旅に出た息子が、それと知らずに実父の弟ジョゼフ(ヨセフ)に出会って、彼を本当の父として受け入れるという、旧約聖書になぞらえたデタラメな物語が、不思議な説得力で語られていることにちょっと感動した。

68年の騒乱のさなかに撮られたガレルのドキュメンタリー短編『Actua 1』は、ドキュメンタリーとは完全に言い切れないところが面白い。ナレーションの使い方などにゴダールの影響が丸出し。しかし、何だかんだ言っても、わたしはこの頃の青臭いガレルの作品が一番好きだ。

パリを舞台に若者たちの集団によるテロ事件を淡々と描いたボネロの『ノクチュラマ』は、ガス・ヴァン・サントの『エレファント』を思い出させもする時間軸を交錯させた編集が、話をわかりにくくしているだけであまり成功しているようには思えないのだが、余計な説明を一切排して、ただただ画面の連鎖だけで見せてゆくラディカルなスタイルには、少なからず映画的な興奮を覚えた。

しかしなんと言っても、最近一番感動したのは、数十年ぶりに見直したバート・レイノルズの『シャーキーズ・マシーン』だ。むかし松浦寿輝か誰だったかが褒めているのを読んで、騙されたと思ってみてみたら本当に面白かったことは覚えているのだが、こんなにもあからさまにプレミンジャーの『ローラ殺人事件』を換骨奪胎してアクション映画に転換した作品だったとは。久しぶりに見直してみてびっくりした。ウィリアム・フレイカー撮影による冒頭トラストの空撮に音楽がかぶさるのを見ているだけでなんだか泣けてくる。こういう空撮で終わる映画、イーストウッドを最後にあまり見なくなった気がする(イーストウッド自身もやらなくなったし)。バート・レイノルズに合掌。