以前ふれたアンドリュー・サリスの『The American Cinema』では、ダグラス・サークは「The far side of paradise」という項目に分類されている。『天の許し給うすべて』(All That Heaven Allows)をみごとにリメイクしたトッド・ヘインズの『エデンより彼方に』(Far from Heaven)の原題は、たぶんこのサリスの「The far side of paradise」を意識したに違いないと思うのだが、確認したわけではない。
まあ、そんなことはどうでもいい。
北朝鮮問題はますます緊迫したものとなっているようだ。そういえばイラクのフセイン元大統領が書いた独裁者小説『悪魔のダンス』が世界に先駆けて日本で翻訳されている。フセインはブッシュとは比べものにならないほどインテリだという噂だ。この小説はどうなのだろう。たしかに、独裁者小説には、ガルシア・マルケスの『族長の秋』をはじめ、ドゥルーズも天才的小説と呼ぶM・A・アストゥリアスの『大統領閣下』、A・ロア=バストス『至高の存在たる余は』、アレッホ・カルペンティエル『方法再説』などなど、傑作が数多い(全部ラテン・アメリカの小説だが。しかし、独裁者をはぐくむ南米のこの土壌はいったい何なのだろう)。
もっとも、フセインの小説はたぶん駄作にちがいないと思う。
ついでに、映画ではたとえばこんなものがある;
シドニー・ギリアット『絶壁の彼方に』
キドラット・タヒミック『虹のアルバム 僕は怒れる黄色』
アレックス・コックス『ウォーカー』
エイゼンシュタイン『イワン雷帝』
セミョーン・アラノヴィッチ『わたしはスターリンのボディガードだった』
アレクサンドル・ソクーロフ『モレク神』
ジョセフ・マンキーウィッツ『ジュリアス・シーザー』
ジョセフ・マンキーウィッツ『クレオパトラ』
ロベルト・ロッセリーニ『ルイ14世の権力奪取』
あるいはこんな歌:
Hooray, everything's great, now President Kill is dead. Hooray I'll bet you can't wait, to vote for President Kill instead...
例によって、この歌詞カードの訳はおかしい。だれかれかまわず殺してしまう President Kill がやっと死んだのに、民衆は次の President Kill にまた投票しようとしているという終わりのフレーズが、冒頭の "Here comes President Kill again" というフレーズに回帰し、きりもない円環構造になっているところがこの曲のミソなのに、「万歳、だれもがうずうずしている/キル大統領の後釜選挙を待っている」ではメッセージが台無しだ。