明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

独裁者とダンス



以前ふれたアンドリュー・サリスの『The American Cinema』では、ダグラス・サークは「The far side of paradise」という項目に分類されている。『天の許し給うすべて』(All That Heaven Allows)をみごとにリメイクしたトッド・ヘインズの『エデンより彼方に』(Far from Heaven)の原題は、たぶんこのサリスの「The far side of paradise」を意識したに違いないと思うのだが、確認したわけではない。

まあ、そんなことはどうでもいい。


北朝鮮問題はますます緊迫したものとなっているようだ。そういえばイラクフセイン元大統領が書いた独裁者小説『悪魔のダンス』が世界に先駆けて日本で翻訳されている。フセインはブッシュとは比べものにならないほどインテリだという噂だ。この小説はどうなのだろう。たしかに、独裁者小説には、ガルシア・マルケス『族長の秋』をはじめ、ドゥルーズも天才的小説と呼ぶM・A・アストゥリアスの『大統領閣下』、A・ロア=バストス『至高の存在たる余は』、アレッホ・カルペンティエル『方法再説』などなど、傑作が数多い(全部ラテン・アメリカの小説だが。しかし、独裁者をはぐくむ南米のこの土壌はいったい何なのだろう)。

もっとも、フセインの小説はたぶん駄作にちがいないと思う。


ついでに、映画ではたとえばこんなものがある;

シドニー・ギリアット『絶壁の彼方に』
キドラット・タヒミック『虹のアルバム 僕は怒れる黄色』
アレックス・コックス『ウォーカー』
エイゼンシュタイン『イワン雷帝』
セミョーン・アラノヴィッチ『わたしはスターリンボディガードだった』
アレクサンドル・ソクーロフモレク神』
ジョセフ・マンキーウィッツ『ジュリアス・シーザー
ジョセフ・マンキーウィッツ『クレオパトラ』
ロベルト・ロッセリーニ『ルイ14世の権力奪取』



あるいはこんな歌:

Hooray, everything's great, now President Kill is dead. Hooray I'll bet you can't wait, to vote for President Kill instead...

XTC "Here comes President Kill again"

例によって、この歌詞カードの訳はおかしい。だれかれかまわず殺してしまう President Kill がやっと死んだのに、民衆は次の President Kill にまた投票しようとしているという終わりのフレーズが、冒頭の "Here comes President Kill again" というフレーズに回帰し、きりもない円環構造になっているところがこの曲のミソなのに、「万歳、だれもがうずうずしている/キル大統領の後釜選挙を待っている」ではメッセージが台無しだ。