▽イェシム・ウスタオウル『雲が出るまで』★★
1975年のトルコにおける単一民族主義的政策。勉強にはなるが、そんなにおもしろい映画ではない。物語の背景にある第一次大戦後のトルコからのギリシア人の引き上げは、アンゲロプロスの『シテール島への船出』に語られる「三度の亡命」の一度目の亡命とほぼ重なる。ヒロインであるアイシェの本名はエレニ。
▽『ウィスキー』★★☆
BSでサンダンス映画祭の特集をやっているのだが、総じてつまらない。このつまらなさはなんなのだろう。「映画」という言葉でイメージされているものが違うとしかいいようがない。サンダンスに招かれて渡米した黒沢清もきっと違和感を感じていたことだろう。そのなかでは、フアン・パブロ・レベージャとパブロ・ストールの『ウィスキー』がいちばんまともな映画だった。ウルグアイのカウリスマキなどという評価を受けている作品だ。正直、この評価の高さには少しとまどう。悪くはない作品だとは思うが、大騒ぎするほどの映画ではない。公式サイトを見たら、山下敦弘がコメントを寄せていた。なるほどと思った。彼の映画に感じるのと同じ、「なにかちょっと違うぞ」という軽い違和感をこの映画にも感じるからだ。フアン・パブロ・レベージャとパブロ・ストールのインタビューを読むと、アニメの「シンプソン一家」にはまったとか、『デリカテッセン』を見てショックを受けたとかいっているようだ。一方で、ジム・ジャームッシュが師匠だみたいなこともいっている。このへんの、趣味がいいのか悪いのかわからないところが、いまいち信用できない。山下敦弘もたまにアキ・カウリスマキとたとえられることがあるが、カウリスマキって単純にもっとすごい人ですよ。だいいち、映画的教養が違います。
▽メル・スチュアート『火曜日ならベルギーよ』★☆
主演のスザンヌ・プレシェット(『鳥』)とイアン・マクシェーンは地味だが、カメオ出演している顔ぶれがすごい。ヴィットリオ・デ・シーカ、ドノヴァン、エルザ・マルティネリ(『ハタリ!』)、ロバート・ヴォーン、アニタ・エクバーグ、ジョン・カサヴェテス、ベン・ギャザラなどなど。ほかに、ジョン・フォード作品でおなじみのミルドレッド・ナトウィックもでている。でも、全然おもしろくないんだな、これが。