明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

『LOFT』『太陽』


夏休みのあいだ、結局、映画館では一本も映画を見なかった。ジャコメッティを見に行った美術館で上映されていた成瀬の『稲妻』を見たぐらいだ。これも見みないと、あれも見ないとという、むかしはもっていた強迫観念が最近はすっかりなくなってしまった。それでいいのではないかと思ったりしている。

とはいいつつ、10月にはいってからまたぼちぼち映画館に通い始めている。最近見た映画のことを簡単にメモっておく。




黒沢清『LOFT』★★☆

すごい場面はいくつかあるが、すごい映画ではなかった。しかし、いつものように水準は高い。ラストの歯車仕掛けがカタカタと動いて湖底からなにかを引き上げるところ。結局、これがやりたかったんじゃないだろうか。ミイラものとしては鈴木清順の『木乃伊(ミイラ)の恋』のほうがいい。幽霊よりも人間のほうが基本的に怖いと思っているわたしとしては、多少マンネリ化しはじめている幽霊の演出よりも、西島俊之の暴走ぶりのほうが怖かった。あんまり描くとネタバレになりそうなので、また機会があったら書きたい。


アレクサンドル・ソクーロフ『太陽』★★★

笑っていいのかわからないが、この映画は笑える。マッカーサーヒロヒトがかみ合わない会話をするディナーの場面。暗に決断を迫るマッカーサーヒロヒトは、「ワインをもういっぱい」ととぼけてみせる。一瞬、『殺人狂時代』でチャップリンラム酒を飲むシーンを思い浮かべた。彼が見るアルバムにはキートンやボギーのブロマイドにまじってチャップリンの写真もはいっている。だが、この映画のなかで彼が米軍の通訳と交わすセリフを信じるならば、この喜劇役者の映画を彼は一本も見たことがなかったらしい。チャーリー=ヒットラー、チャーリー=ヒロヒト