明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

▽ニコラ・フィリベール

『ルーヴル美術館の秘密』は『ぼくの好きな先生』のあとで撮られた映画なのだと思っていたが、実は1988年に撮影されたことを知った。してみると、あのなかで描かれていたルーヴルの改装は、わたしがフランスに行く前のことになる。

フィリベールがはじめて映画と関わったのがルネ・アリオの "Les Camisards" だというのも意外だった(スタッフの大部分は現地調達されたのだが、フィリベールは土地のものだと偽って撮影に参加したらしい)。これは、18世紀初頭、ナントの勅令の廃止後、政府の迫害に抵抗して、山に立てこもって反乱を起こした熱狂的なプロテスタント集団、カミザールのゲリラ的戦いを描いた映画で、フランスに住んでいるときたまたまテレビで見て非常に気に入った作品なのだ。チミノの『シシリアン』のように無理にドラマをつくらず、淡々と出来事を記録していくようなタッチが、いかにもゲリラの戦いにふさわしく、見ているうちに熱いものが静かにこみ上げてくるような作品だった。ゲリラ好きのわたしには、見ていてすこぶる気持ちのいい映画だった。

フーコーの愛読者をのぞいて、ルネ・アリオなんて名前はだれも知らない。というか、フーコーの愛読者でも『ピエール・リヴィエールの犯罪』を映画化した監督の名前など知らないだろう。それに、この映画には有名な俳優は一人も出ていない。賭けてもいいが、わたしが生きているあいだに、日本で見る機会はないはずだ。こういう映画がまだまだいっぱいある。