明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

金井美恵子・金井久美子『楽しみと日々』、フェルナンド・ペソア『不安の書』など



最近しばらく大きな書店をじっくり見て回ることがなかった。昨日、Planet+1ストローブ=ユイレの映画を見たついでに、旭屋と紀伊国屋をぶらりと歩いてきた。『あの彼らの出会い』にいたく感動したので、さっそくまだ読んでいなかったパヴェーゼの『故郷』と『美しい夏』を買う。映画で使われていた詩編『レウコとの対話』はまだ翻訳がない。今回の映画につけられていた字幕は満足のいくものではなかったので、ぜひ専門家の手になる翻訳を望む。

さて、ほかに気になったものをメモしておく。

金井美恵子・金井久美子『楽しみと日々』


金井美恵子のひさびさの映画エッセイ集『楽しみと日々』が出ていた。プルーストの著作から借りたタイトルも、(たぶん)金井久美子による本の装丁も映画本らしくないが、中身はルノワールロメール、小津、成瀬、ワイズマンなどの映画について書かれた、れっきとした映画本だ。いかにも金井美恵子が見ていそうな映画ばかりが扱われていて、正直いって、とくに新しい発見は期待できないような気もする。しかし、情報だけ、観念だけ、感情だけが、映画とはかけ離れたところでむなしく踊っている Web の映画評などを見ていると、「細部に淫する」とでもいうしかない金井美恵子の文章の由緒正しい官能性は、やはり映画に必要なものなのだと思えてくる。


フェルナンド・ペソア『不安の書──リスボン市に住む帳簿係補佐ベルナルド・ソアレスの 』


ずいぶん前に出ていた本だが、昨日気づいたので。ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソア(とは誰なのか。いくつもの名前を持つこの謎の作家について考えるとき、アイデンティティの問題がつねに立ち現れる)による未完の断章。数年前に思潮社から出た『不穏の書、断章』というのを買ってもっているのだが、あれは原著の10の1程度の抄訳にすぎない。これが完訳に当たるというが、結局この未刊の書には完成版など存在しないのかもしれない。どうでもいいが、こういう本が出るなら最初から出してほしかった。二度手間になるじゃないか。


矢澤 利弘『ダリオ・アルジェント──恐怖の幾何学』


こんな本もだいぶ前に出てました。本屋に行っても、映画本のコーナーにはあまり行かないんです、なぜか。というわけで、だいぶ古い情報ですが・・・


>>野坂昭如ルネサンス<<


野坂昭如のレアな作品2作『好色の魂』『水虫魂』が、岩波原題文庫に登場。この後も刊行は続けられるらしい。全部で7作がラインナップされている。


柄谷行人の『日本精神分析』も文庫に。