わたしの気に入った本を紹介してゆく、単にそれだけのコーナーです。
地震は地震計とは独立して存在し、気圧の変動は針の跡とは別に存在するが、藝術作品はかたちとしてしか存在しない。言い換えれば、作品は行為としての藝術が残した痕跡や軌跡ではなく、作品がまさしく藝術なのである。
アンリ・フォション:
フランスの高名な美術史家。この本に収められている美しいテキスト「手を讃えて」はゴダールの「映画史」にも引用されている。そういえばたしか『ゴダールの決別』には、「手か眼かどちらかを失うならば、わたしは眼を失う」というセリフをだれかが口にする場面があった。ちなみに、蓮實重彦はこの批評家に影響を受けたと公言している。