明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。






























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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

甦るバトジャック・プロ


『七人の無頼漢』の DVD のことを紹介したときに、ジョン・ウェインのバトジャック・プロによるこの作品がなぜパラマウントから DVD 化されて出るのか不思議だという意味のことをたしか書いたと思う。調べればすぐにわかることだったが、面倒くさいのでそのままにしておいた。最近になって、このベティカー作品を含めたバトジャック・プロの数作品がフランスでも DVD 化され、「ル・モンド」の Web 版に関連記事が出た。そのなかでその辺の事情がふれてある。要約するのも逆に面倒なのでそのまま訳しておく。

ジョン・ウェインの作品なんてみんな見たよと思っている人も多いかもしれないが、実際には、ほとんど見る機会が奪われている作品も少なくない。ここでふれられているのはそのほんの一部である。

プロデューサー、ジョン・ウェイン


1952年、ジョン・ウェインは、プロデューサーのロバート・フェローとともに映画製作会社ウェイン=フェロー・プロダクションを設立する。数ヶ月後、フェローが去ると、ウェインは会社の名前をバトジャック(Batjac)に変える。Batjak はエドワード・ルトヴィクが監督した実に見事な作品『怒涛の果て』(48)の中に登場する架空の海運会社の名前だった。だが、ウェインの秘書が名前を勘違いして、Batjac と会社名を書き込んでしまったのだった。

ウェインにとって大事だったのは、自分が主役を演じる映画を芸術面で管理することだった。もっとも、一握りの作家たちには、ウェインは盲目的な信頼を寄せていた。ハワード・ホークスや、とりわけジョン・フォードがそうだった。バトジャック・プロは、ワーナーやユナイテッド・アーティスツと配給契約を結び、『アラモ』(60)や『グリーン・ベレー』(68)のような自ら監督主演した作品はもちろんのこと、他監督が手がけ、必ずしも自分が出演しているわけではない作品も何本か製作している。

1979年、ウェインの死後、バトジャック・プロはウェインの家族によって管理運営される。法的な問題によって、一部の作品が凍結されて、ながらく日の目を見なくなり、ジョン・ファローの『ホンドー』や、バッド・ベティカーの『七人の無頼漢』のような作品は、神話的映画の域に近づくことになる。

2004年、バトジャック・プロはパラマウントと配給契約を結ぶ。パラマウントは、DVD のかたちで修復された作品を配給し、場合によっては、35ミリのニュープリントで公開した。いくつかの作品が DVD で見られるのはこの契約のおかげである。とりわけ、ウィリアム・ウェルマン監督による2本、『紅の翼』(54)では、ウェインは飛行機を危機から救おうとするパイロットを演じ、『男の叫び』(53)では、ウェインは北極に墜落した飛行機から仲間とともに生き延びようとする。

同じウェルマンが監督し、ロバート・ミッチャムが主演した『血ぬられし爪あと/影なき殺人ピューマ』は、どちらかというと型にはまっていた上の2作よりも興味深い作品である。兄を殺したピューマに復讐するという観念に取り憑かれた凶暴な男を描いた作品だ。ウィリアム・H・クローシアの華麗で実験的なキャメラが、時に荒々しい色に染められるモノクロのようなイメージを作り上げている。

さらに、ジョン・ファローの神話的作品『ホンドー』(53)も見ることができる。人種差別に異を唱える誠実なウェスタンだが、その厳格さは最後の場面(インディアンとの派手な闘い)で崩れる。ボーナストラックを見ればわかるが、この場面はフォン・フォードによって撮影されたものである。アンドレ・バザンの文章によって名高いバッド・ベティカー『七人の無頼漢』(56)は、もう一つの貴重な作品であり、ランドルフ・スコットリー・マーヴィン主演による激しい復讐の物語である。必見の作品だ。


リンクは基本的に Amazon.com にはってあるが、フランス版をお探しの人はここ(『紅の翼』の仏版)あたりから調べていってほしい。『七人の無頼漢』などは、Amazon.fr には登録されていないようだ。仏版はまだ発売されていないのか、それとも、もうなくなったのか。フランスの DVD は1年もたたないうちに品切れになることが多いが、それにしても早すぎる。



ちなみに、ジョン・ファローの『ホンドー』だけは日本でも DVD が出ている。『大時計』の日本語版もそろそろ出ていいころじゃないのか。



参考までに蓮實重彦の言葉を引用しておく。

「ミア・ファーロウの父親に立体西部劇の古典。ロケーションを人件費の安いメキシコの地に求めることで、マカロニ・ウエスタンへの道を開いたことでは犯罪的だが、その空間感覚は忘れがたい。テクニカラー末期の「アメリカの夜」による夜景の夢魔的な魅力。」