明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

ジェーン・ワイマンが死去


もっと早く書くつもりだったが、時間がなかった。


米女優ジェーン・ワイマンが、10日、カリフォルニア州パームスプリングスの自宅でなくなった。享年93歳。

30年代からワーナーの契約女優として映画に出演し、ジーン・ネグレスコの『ジョニー・ベリンダ』(48)で暴行された耳の不自由な女性を演じてアカデミー主演女優賞を獲得。その他の代表作としては、『失われた週末』(45)、『子鹿物語』(47)、『ガラスの動物園』(50)、『青いヴェール』(51)などがあるが、わたしにとってジェーン・ワイマンは、なによりもダグラス・サークによる2本のメロドラマの傑作、『心のともしび』『天の許し給うすべて』のヒロインであり、それ以外の作品の彼女はほとんど記憶に残っていない。

美人女優というのとはちょっとちがうし、性格女優というわけでもない。こういってはなんだが、色気がある女優ではなかった(その証拠に、山田宏一の『美女と犯罪』では、ジェーン・ワイマンはたった一行しか言及されていない。トリュフォーは『舞台恐怖症』にふれて、この映画でヒッチコックがワイマンを起用したのは、彼女がパトリシア・ヒッチコックに似ていたからではないかと、インタビューでヒッチコックにたずねているが、これはワイマンがぶすだといっているに等しい)。そういう意味では、家庭の母親を演じたホーム・メロドラマがまさにふさわしい女優だったようにも思えるが、同時に、サークがメロドラマに与えたゆらぎのなかで、彼女は、もうひとりのサーク映画のヒロイン、バーバラ・スタンウィックのようなグラマラスな美人女優とはまた別のかたちで「女」を感じさせる演技をしていたといっていい。


ジェーン・ワイマンレーガン大統領の元夫人であったことにも一応ふれておこう。もっとも、平成生まれの若者たちのなかにはレーガンの名前さえ知らないものも多いだろう(いや、冗談でなく)。ジェーン・ワイマンのことを覚えている人がどれだけいるのだろうか。

それにしても、ダグラス・サークの DVD の日本での発売は、まるでこの死を予言していたとしか思えない。何というタイミングのよさだろう。