村上龍の『半島を出よ』がやっと文庫になった。これで貧乏人のわたしにも手が届く。
「まさか村上龍で対談する日が来るとは思わなかった」と、松浦寿輝はこの本が出たとき回りくどいほめ方をしていた。一方、浅田彰は、「出来の悪いトム・クランシー」と評していた。さて、どちらが正しいのか。ともかく、村上龍は、新作が出たら読みたいと思わせる数少ない作家のひとりではある。ちなみに、松浦寿輝の『半島』も最近文庫化した。この夏は、半島についてちょっと考えてみるか。
松浦の小説は、『巴』という一風変わったミステリーを昔読んだが、吉田健一の模倣のような文体で描かれるオヤジの少女幻想にちょっとげんなりして、それ以来避けている。しかし、あまりにも評判がいいので、評価を下すのはせめてもう一冊読んでからにしようと思う。