明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

テッド・テツラフ『窓』


テッド・テツラフの名高い『窓』を見る。40年代に撮られたもっとも有名なフィルム・ノワールの一本だ。

テツラフはヒッチコックの『汚名』などで有名なキャメラマンコーネル・ウールリッチウィリアム・アイリッシュ)の原作を、『らせん階段』ロバート・シオドマク)や『無謀な瞬間』(マックス・オフュルス)で知られるメル・ディネリが脚本化した物語は、一言でいうなら、狼少年の話をサスペンスにアレンジしたものである。製作はあのドーリ・シャーリ(ただし、クレジットはされていない)。

いつもほらばかり吹いていて、両親からも相手にされなくなっている少年が、上階でおこった殺人事件を、窓の隙間から目撃してしまうところから、物語ははじまる。少年は両親に見たことを話すが、両親はいつもの作り話だろうといってまともに取りあってくれない。絶望した少年は、警察に事件を通報しにいくのだが、それがきっかけで、殺人犯たちに自分が事件を目撃していたことを知られてしまう・・・

物語は、当時としては斬新だったと思われるが、いま見ると多少鮮度が落ちているように感じられるのは否めない。同じようなテーマをあつかった『狩人の夜』にくらべると、インパクトの点では数段落ちるだろう。しかし、そつのない演出で最後まで飽きずに見させる。殺人犯役のポール・スチュアートはあまり有名でないバイ・プレイヤーだが、その独特の風貌は忘れがたい。もともとはマーキュリー・シアターでオーソン・ウェルズと活動をともにした人物で、『市民ケーン』ではホテルの支配人かなにかを演じていて、『オーソン・ウェルズのフェイク』にもたしか出ているはずだ。ほとんど脇役ばかりで、主役級を演じている作品はほとんどないといっていいだろう。『窓』は彼が非常に重要な役を演じた初期の代表作の一本でもある。アンソニー・マンの映画に慣れ親しんでいると、父親役のアーサー・ケネディは若干違和感があった(それに、ほとんど最後までたいした活躍はしない)。母親役のバーバラ・ヘイルと、ポール・スチュアートの妻役のルース・ローマンの女優二人が、シナリオ上あまり重要な役割を担わされておらず、どちらも影が薄かったことが残念だ。


この作品は、後に、リチャード・フランクリンによって、『ビデオゲームを探せ!』としてリメイクされている。