書物
抄訳版でしか出ていなかった鈴木道彦訳マルセル・プルースト『失われた時を求めて』の完訳版が、ついに文庫で出ました(情報が少し古いですが)。わたしはおおむかしに、大学の夏休みをかけて、井上究一郎訳で読み通しました。疲れましたが、えもいわれぬ体…
「もう死んでしまった者らのことは忘れよう、生きている者らのことすらも。あなた方の心を、まだ生まれてこない者たちにだけ向けておくれ。」大江健三郎『取り替え子』 映画をよく知っている者には、『取り替え子』は多少複雑な思いを抱かせる小説かもしれな…
大江健三郎の『取り替え子 チェンジリング』を今ごろになって読み始める。150ページほど読み進めたが、タイトルの意味はいまだわからず。第三章「テロルと通風」にいたってようやく物語の核心に近づく気配。義兄である伊丹十三の自殺をモチーフに書かれたモ…
『王になろうとした男』(ジョン・ヒューストン) 『マルタの鷹』『白鯨』『アフリカの女王』など、不朽の名作の製作秘話に加え、赤狩りに抵抗した不屈の反逆精神、ヘミングウェイ、サルトルなど芸術家たちとの友情、五度も結婚した波瀾に満ちた生涯を率直に…
『映画旅日記パリー東京』(梅本洋一) 映画狂は東京のスクリーンを離れ、パリへと飛び出した。まだ無名だった黒沢清・青山真治を連れ出し、欧米の観客を驚天動地に突き落とすべく、体を張っていくつもの上映会を仕掛けた。映画への愛と怒りとが迸るドキュメ…
『ミシェル・フーコー思考集成』が高すぎると思っていたあなたに朗報です。あれのダイジェスト版『フーコー・コレクション』がちくま文庫から刊行され始めました。第一巻は「狂気・理性」。今月の目玉商品です。
丹生谷貴志の『天皇と倒錯』がいつの間にか品切れ状態になっていて、どこの本屋にもおいていないので焦ったが、幸いジュンク堂のオンライン・ショップに新刊の在庫が残っていた(汗)。オンライン・ショップでは、注文後に、「やっぱり在庫ありませんでした…
アラン・ルルフォの『ペドロ・パラモ』がいつの間にか品切れになっていた。大型のネット書店をいくつか調べてまわったが、すべて入手不可。いつか買うつもりでいたが、まさかこんなに早くなくなるとは思っていなかった。が、最終兵器として残していた三月書…
「私は、あの冬、漠とした怒りの虜になっていた。」(『シチリアでの会話』) プラネットでストローブ=ユイレの『労働者たち、農民たち』と、ペドロ・コスタの『映画作家ストローブ=ユイレ/あなたの微笑みはどこに隠れたの?』を大阪 Planet Studio + 1で…
「映画史を作った30本」の戦後篇をようやくアップした。コメントの大部分はユセフ・イシャグプールの『ル・シネマ』からの引用ですませた。ようするに手抜き。しかし、この本はなかなか簡潔にまとまっていて便利である。引用しやすい文章がすぐに見つかる…
デンマークの新聞にムハンマドを揶揄した風刺画が発表されたことがイスラム社会の反発を招き、ますます波紋を広げている。この風刺画自体は昨年の9月に発表されたものだというから、今回の騒動の直接の引き金となったのは、その風刺画がフランスなどのヨー…
昨日の続き。この『ヌーヴェル・ヴァーグの時代』という本はほんとにすごい。次から次へと意味不明の文章の連続だ。リヴェットの文章につづいて、今度はアンドレ・S・ラバルトが書いたクロード・シャブロルの『気のいい女たち』論を読んでみた。のっけから…
突然まっ白な猫になってしまったピーター少年は、大好きなばあやに、冷たい雨のそぼ降るロンドンの街へ放り出された。無情な人間たちに追われ、意地悪なボス猫にいじめられ──でも、やさしい雌猫ジェニィとめぐり会って、二匹の猫は恋と冒険の旅に出発した。…
そういえば、鹿砦社の編集長だったか社長だったかが名誉毀損かなにかで捕まった。「スキャンダル大戦争」という本のシリーズで知られる出版社だ。テレビの報道では、扇情的な表紙のこの本というか雑誌をならべた映像が使われていた。この出版社は、他社が尻…