明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

2017-01-01から1年間の記事一覧

マイケル・カーティズ『無法者の群』

マイケル・カーティズ『無法者の群』(Dodge City, 39) ★★ ワーナーでウォルシュと肩を並べていた冒険映画のヴェテラン、マイケル・カーティズは、エロール・フリンとコンビを組んで数々の冒険映画・海賊映画を作っている。これは、その分野ですでに成功して…

セシル・B・デミル『大平原』

セシル・B・デミル『大平原』(Union Pacific, 39) ★★ 大陸を横断する鉄道ユニオン・パシフィックとセントラル・パシフィックの建設を背景に、金儲けのためにそれを妨害する一味(一味のボスを演じるブライアン・ドンレヴィは、この年、4本の西部劇で同様の…

『砂塵』『地獄への道』

神戸映画資料館での『駅馬車』講座の日がだんだん近づいてきたので、6月は西部劇を中心に書くことにする(ただのメモに近いものだが)。 ジョージ・マーシャル『砂塵』(Destry Rides Again, 39) ★★½ 『掠奪の町』や『縄張り』などのコミカルな西部劇を得意と…

アルトゥール・ロビソン『戦く影』――影と鏡の戯れ

アルトゥール・ロビソン『戦く影』(Schatten - Eine nächtliche Halluzination, 23) ★★★ 「『今宵かぎりは』のダニエル・シュミットがこの映画のリメイクを撮ってくれないものかと思う。シュミットなら必ずやこの作品をより豊かなものにし、再発見させてくれ…

新作DVD――マムーリアン『恋の凱歌』、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー『スパイ』ほか

DVD

ロバート・フラハティ『極北のナヌーク(極北の怪異)』 [Blu-ray] 、『極北のナヌーク(極北の怪異)HDマスター』[DVD] ルーベン・マムーリアン『恋の凱歌』 [DVD] どちらかと言うと馬鹿馬鹿しいメロドラマだが、絶頂期のディートリッヒの美しさを見ることがで…

ピーター・エマニュエル・ゴールドマン『灰の車輪』――ゴダールやストローブも注目した前衛作家の横顔

"His people come to life simply and believably; more believably than most of the people in the Chabrol and Truffaut cinema... the film has a thematic and formal beauty that is remarkable." - Jonas Mekas"[…] the most exciting new filmmaker …

チャールズ・ブラービン『街の野獣』――プレ・コード時代の壮絶な銃撃戦

チャールズ・ブラービン『街の野獣』 (The Beast of the City, 32) ★★ 正直、あまり期待していなかったのだが、予想もしていなかった展開と、何よりもラストの銃撃戦の凄まじい暴力性に圧倒された。厳密に言うならば、この戦前に撮られた警察映画はフィルム…

アンリ・ドコワン『家の中の見知らぬもの』――ナチの資本で撮られた仏製ミステリー映画の問題作

アンリ・ドコワン『家の中の見知らぬもの』★★ 『十字路の夜』、『パニック』、そしてこのドコワンの『家の中の見知らぬもの』と『La vérité sur Bébé Donge』……。そのうち、「ジョルジュ・シムノンとフランス映画」という本が書かれねばならないだろう。この…

『市民ケーン』余話――コウルリッジの夢とディケンズの謎

オーソン・ウェルズの『市民ケーン』でケーンが自分のために建て、最後に、そのなかで孤独に死んでゆく城の名前「ザナドゥ」が、イギリスの詩人サミュエル・テイラー・コウルリッジによって書かれた叙事詩「クブラ・カーン」Kubla Khan のなかに登場する土地…

新作DVD――大島渚『マックス、モン・アムール』ほか

DVD

ジョゼフ・フォン・スタンバーグ『アメリカの悲劇』 [DVD] 『陽のあたる場所』と同じセオドア・ドライサーの小説をスタンバーグが映画化。エイゼンシュテインが最初映画化する予定だったが、シナリオが受け入れられず降板した。 ヴィンセント・ミネリ『いそ…

『市民ケーン』劇場その6――ガラス玉遊戯

【4月8日】 《神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」》 サム・ウッド『恋愛手帖』 "snowglobe" と呼ばれる雪の降るガラス玉は19世紀にはすでにヨーロッパで知られていた。それがアメリカに伝わっ…

『市民ケーン』劇場その5――ヘンリー・C・ポッター『ヘルザポッピン』

【4月8日】 《神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」》 ヘンリー・C・ポッター『ヘルザポッピン』(41) "It's a picture about a picture Hellzapoppin." 映画のなかの登場人物が映写技師に向かっ…

『市民ケーン』劇場その4――アニメ「ザ・シンプソンズ」と『市民ケーン』

【4月8日】 《神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」》 89年にアメリカのFOXテレビで放送開始されるアニメ「ザ・シンプソンズ」でも『市民ケーン』は何度もパロディにされてきた。シュルツの漫画に…

『市民ケーン』劇場その3――漫画「ピーナッツ」と『市民ケーン』その3

4月8日 神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」 1984年9月2日スヌーピーが Pawpet Theater で『市民ケーン』のパロディ(?)『市民ビーグル』を演じる。すべてを手に入れた男が、すべてを失う。失…

『市民ケーン』劇場その2――漫画「ピーナッツ」と『市民ケーン』その2

4月8日 神戸映画資料館 連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」 1972年10月29日73年12月9日のエピソード同様に、このエピソードでも、70年代はじめには『市民ケーン』は普通にテレビで見られるようになっていたこと…

『市民ケーン』劇場その1――漫画「ピーナッツ」と『市民ケーン』その1

神戸映画資料館でやることになっている連続講座「20世紀傑作映画 再(発)見」第1回、「『市民ケーン』とは何だったのか」の期日が迫ってきたので、正直、ブログを更新している余裕が全然なくなってきた。というわけで、宣伝も兼ねて、当日に話す内容とはあん…

新作DVD〜ジョン・フォード『四人の復讐』、フリッツ・ラング『真人間』、『オーソン・ウェルズのフェイク』ほか

DVD

ジョン・フォード『四人の復讐』 [DVD] ジョゼフ・フォン・スタンバーグ『アメリカの悲劇』 [DVD] フリッツ・ラング『真人間』 [DVD] オーソン・ウェルズ『オーソン・ウェルズのフェイク』 [DVD] 『ヒッチコック/トリュフォー』 [DVD] 『ミッドナイト・スペ…

ブニュエルがリーフェンシュタールの『意志の勝利』を再編集する――幻のプロパガンダ映画についての覚書

1939年、ブニュエルは、妻と息子を連れて、内乱のスペインからハリウッドに向かう。スペイン内乱を描く映画の監修を依頼されたからだった。しかし、いざ仕事に取り掛かろうとした矢先に、ワシントンから指令が届く。全米製作者協会も、アメリカ政府も、共和…

新作DVD――『リリオム』、『グライド・イン・ブルー』、『日本暴行暗黒史 異常者の血』、『ダゲレオタイプの女』ほか

DVD

ジョン・フォード『駅馬車 HDリマスター』[Blu-ray] アーネスト・シュードサック『ドクター・サイクロプス』 [DVD] ラルフ・ネルソン『不時着』 [DVD] サム・ペキンパー『荒野のガンマン HDリマスター版』[Blu-ray] ジョージ・シドニー『バイ・バイ・バーデ…

アンドレイ・ウジカ『ニコラエ・チャウシェスクの自伝』――プロパガンダ映像によるアンチ・プロパガンダ

アンドレイ・ウジカ『ニコラエ・チャウシェスクの自伝』 (Autobiografia lui Nicolae Ceausescu, 2010) ★★★ 「民衆とは、まず画面の切り取り方なのだ。カメラが切り取る長方形の画面がある、そしてこの画面のなかに、沢山の人々がいる。それで十分だ。[…]そ…

ダグラス・トランブル『ブレインストーム』

ダグラス・トランブル『ブレインストーム』(83) ★★ 「いつの日か、映画を作る必要さえなくなるだろう。観客は頭部に電極を埋め込まれ、こっちでどれかのボタンを押すだけで、「おお」とか「ああ」とか言って、驚いたり笑ったりしてくれるようになるんだ。す…

アレクサンドル・メドヴェトキン『新モスクワ』――ユートピアをディストピアに変容させる曖昧な風刺

アレクサンドル・メドヴェトキン『新モスクワ』(Novaya Moskva, 1938) ★★★ 『幸福』で知られるロシアの映画監督アレクサンドル・メドヴェトキンのトーキー時代の代表作の一つ。モスクワの都市再建計画が進行中に撮られたこのシュールなコメディは、スターリ…

『超短編映画集 ONE PIECE 矢口史靖×鈴木卓爾監督作品 テトラパック』『殺人者はバッヂをつけていた』ほか

DVD

リチャード・クワイン『殺人者はバッヂをつけていた』 [DVD]キム・ノヴァク主演のフィルム・ノワールの傑作。この作品については、ちゃんと紹介したことはなかったが、これまでたびたび触れてきた。昨年末に、知らない間に日本でもソフト化されていたらしい…

ラリー・コーエン『ディーモン/悪魔の受精卵』

ラリー・コーエン『ディーモン/悪魔の受精卵』(God Told Me To, 76 未)★★½ 有名でないわけでは決してない。才能にも恵まれている。しかしなぜかどうにも影が薄い。そういう映画作家がいる。ラリー・コーエンもそんな監督の一人だ。『God Told Me To』は、…

G・W・パプスト『財宝』――パブストが撮ったただ一つの表現主義映画

明けましておめでとうございます(今年になって、この言葉を初めて口にした、というか書いた)。今年も、昨年同様、のんびりとやってゆきます。 G・W・パプスト『財宝』(Der Schatz, 23) ★★パプストのデビュー作であり、彼の最初にして最後の真に表現主義…