明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


このサイトはPC用に最適化されています。スマホでご覧の場合は、記事の末尾から下にメニューが表示されます。


---
神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

---

評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

映画

辻原登『寂しい丘で狩りをする』

今年からはブログをもっとちゃんと更新しようと思っていたのだが、1月もすでに3分の2が過ぎてしまった。小ネタでいいから、今月の残り、毎日更新するつもりでやっていこう。 辻原登『寂しい丘で狩りをする』 一昨年ぐらいに、映画ファンのあいだで話題に…

ジョセフ・ロージー『拳銃を売る男』

ジョセフ・ロージー『拳銃を売る男』 Imbarco a mezzanotte (Stranger on the Prowl/Encounter) 52 『大いなる夜』撮影時にすでに自分の名前が日米活動委員会のブラックリストに載ることを知っていたロージーは、アメリカから逃げるようにして次作をイタリア…

ジーン・ネグレスコ『三人の波紋』

シドニー・グリーンストリートが出ているのは知っていたので、観音像のアップで始まるオープニングを見たときから、なんだか『マルタの鷹』みたいだなと思っていると、やがてピーター・ローレが登場し、最後に、大金がからんだ籤をめぐってわれを忘れたシド…

ハリー・クメール『赤い唇』『Malpertuis』

日本ではほとんど知られていないが、幻想映画の巨匠として海外ではかなり有名なベルギーの映画作家ハリー・クメール(Harry Kumel)の映画を2本。Kumel は「クーメル」と読む方が正解である気がするのだが、一般にはこういう表記になっているようだ。 『赤…

エルマンノ・オルミ『時は止まった』

エルマンノ・オルミ『時は止まった』(59) エルマンノ・オルミが1959年に撮った長編デビュー作。 第二次大戦で父親を亡くしたオルミは、家計を支えるために、10代の頃から電力会社エディソン・ヴォルダ社で働き始める。皮肉なことに、というか、われわ…

ジャン=クロード・ルソーとの対話

ジャン=クロード・ルソーとの対話 シリル・ネラ [仏 capricci から出ているジャン=クロード・ルソー『閉ざされた谷』の DVD に同封されているブックレットのなかに、ルソーのインタビューが収められている(ちなみに、この DVD には、仏版 DVD としては珍…

ジョン・ボールティング『The Magic Box』

ジョン・ボールティング『The Magic Box』(51)。エジソンやリュミエール兄妹の陰に隠れて忘れ去られてしまった、イギリスにおける映画のパイオニアの一人、ウィリアム・フリーズ=グリーンの生涯を描いた作品。映画の発明にかまけて家庭を顧みない主人公をロ…

ウスマン・センベーヌ『Xala』

ウスマン・センベーヌ(センベーヌ・ウスマンともいう)は、セネガルの映画監督で、しばしば「アフリカ映画の父」などとも呼ばれる。『Xala』(「ハラ」)は、センベーヌの撮った4作目の長編である。フランスからの独立直後のセネガル。独立したといっても…

アントワーヌ・ド・ベック『ラ・シネフィリー 視線の誕生──1944−1968年 ある文化の歴史』

アントワーヌ・ド・ベック『ラ・シネフィリー 視線の誕生──1944−1968年 ある文化の歴史』 のんびり読んでたので、やっと半分ほど読み終わった。シネフィリー(映画愛)を歴史的に論じた本と思って読みはじめたのだが、今のところ、実質、「カイエ・…

DotDash メールマガジン第7号〜アラム・アヴァキアン『エンド・オブ・ザ・ロード』(70)

DotDash メルマガ第7号では、アラム・アヴァキアンの『エンド・オブ・ザ・ロード』という映画を取り上げた。『エンド・オブ・ザ・ロード』は、トマス・ピンチョンと並び称されるアメリカの現代作家ジョン・バースの『旅路の果て』を、アルメニア系アメリカ人アラム…

DotDash メールマガジン第6号〜ウジェーヌ・グリーン『Le monde vivant』

DotDash メルマガ第6号では、ウジェーヌ・グリーンの『Le monde vivant』という映画を紹介しました。ジョアン・ペドロ・ロドリゲスが「カイエ」のゼロ年代ベストテンに選んでいる作品です。アメリカからフランスに移住したウジェーヌ・グリーンは、最初、バ…

DotDash メールマガジン第5号〜ルクレシア・マルテル『頭のない女』

DotDash メルマガ第6号では、現在アルゼンチンを代表する女性監督ルクレシア・マルテルの『頭のない女』という映画について書いた。ルクレシア・マルテルについては以前にも軽く紹介したことがあるが、本格的に論じたのは今回が初めてだ。ある交通事故をき…

DotDash メールマガジン第4号〜フォルーグ・ファッロフザード『あの家は黒い』

DotDash メールマガジン第4号の連載では、フォルーグ・ファッロフザードの『あの家は黒い』(62)という映画について書きました。フォルーグ・ファッロフザードはイランの高名な女性詩人で、キアロスタミの『風の吹くまま』のタイトルは彼女の詩の一節から…

リカルド・フレーダとイタリア・モダン・ホラー映画の誕生

リカルド・フレーダ(または、リッカルド・フレーダ)は、一言でいうなら、イタリア大衆映画の巨匠ということができるだろう。42年に映画監督としてデビューしたかれは、ネオ・リアリズムが脚光を浴びる当時のイタリア映画の潮流に逆らうようにして、ソー…

DotDash メールマガジン第2号〜『デイヴィッド・ホルツマンの日記』

DotDash メールマガジン第2号が発行されました。今回は、ジム・マクブライドの長編デビュー作『デイヴィッド・ホルツマンの日記』(David Holzman's Diary, 1967)という映画のことを紹介しました。当時流行していたシネマ・ヴェリテをパロディにし、モキュ…

DotDash メールマガジン第1号〜マリオ・ペイショト『限界』

以前いっていた DotDash のメールマガジン第1号(http://dotdashfilm.com/?page_id=361)に、ブラジルの伝説的映画、マリオ・ペイショトの『限界』について書きました。最後の部分を引用しておきます。「映画の限界をめざして、すべてを映像のみで表現する…

ニコラス・レイ『生まれながらの悪女』

ワーナー・アーカイヴ・コレクションから出ている DVD でニコラス・レイの『生まれながらの悪女』を見たのだが、嬉しいのは、この DVD には使われなかった別エンディングが特典映像に収録されていることだ。『生まれながらの悪女』は、プロデューサーのハワ…

アベル・ガンス『世界の終わり』

アベル・ガンス『世界の終わり』(30) ガンスのトーキー第一作。『地球最後の日』や、『アルマゲドン』、『ディープ・インパクト』といった作品の元祖とでもいうべきSFだが、一般には失敗作と考えられていて、ガンス本人も全然認めていなかった。彗星が数ヶ…

Gerald Kargl『Angst』

Gerald Kargl『Angst』(83)。 オーストリアの監督 Gerald Kargl が撮った唯一の長編。精神病院から退院したばかりの狂人が、殺人衝動を抑えきれずにその日のうちに次々と人を殺してゆく様子を淡々と描いた作品で、公開当時、各地で上映禁止になり、その後、ほ…

ポール・ヴェキアリ『Femmes femmes』

ポール・ヴェキアリ(「ヴェッキアリ」という表記もあるが〔こちらの方がフランス語の綴り通り〕、どちらが正しいのか)の『Femmes femmes』を約20年ぶりぐらいに見直した。フランスに住んでいたときに図書館でビデオを(当時はもちろん DVD などなかった…

セルジュ・ダネー『L'Exercice a ete profitable, Monsieur.』

出版当時に買っておきながら部分的にしか読んでなかったセルジュ・ダネーの『L'Exercice a été profitable, Monsieur.』をやっと真剣に読みはじめた。日記形式の記述ゆえの読みやすさと読みにくさ(この本は、1988年から1991年まで書き継がれた映画…

ポール・ニューマン『オレゴン大森林/わが緑の大地』

気がついたら(とっくに気がついてたけど)、ひと月以上更新していなかった。まとまったものを書こうとすると、全然更新できないので、これからはツイッターで書いてるような小ネタもとりあげていこうかと思ってる。 ポール・ニューマン『オレゴン大森林/わ…

現代ルーマニア映画の2人の作家

ルーマニア映画はなかなか面白い。ルーマニア映画の現在を語るほど多くを見ているわけではないが、コルネリウ・ポルンボイウとクリスティ・プイウという2人の作家の作品を見ただけでも、いまのルーマニア映画があなどれないことはわかる。以下、簡単なメモ…

ヴィムズ・ムーヴィー

冒頭のところだけ訳すつもりだったのに、とうとう全部訳してしまった。ダネーの文章はなかなか一筋縄ではいかない。『La rampe』におさめられた難解な文章のなかでは、これなど読みやすいほうではあるが、それでもところどころわかりづらい部分がある。とり…

アルフレッド・E・グリーン『紅唇罪あり』

アルフレッド・E・グリーン『紅唇罪あり』(Baby Face, 33) 窓から工場の煙突しか見えないような場末の酒場で働いていた女(バーバラ・スタンウィック)が、セックスを武器にしてのし上がってゆく。そのきっかけを与えるのが、知人のインテリから読むことを…

ツイッターに発表された青山真治による2010年のベストテン

ツイッターに発表された青山真治による2010年のベストテン 1、ナイト&デイ 2、ゴダール・ソシアリスム 3、シャッター・アイランド 4、ブロンド娘は過激に美しく 5、インビクタス 6、第9地区 7、スプリング・フィーバー 8、クリスマス・ストー…

「フィルム・コメント」誌に掲載された蓮實重彦のベスト10

「フィルム・コメント」誌に掲載された蓮實重彦のベスト101.刑事ベラミー 2.第9地区 3.ゴダール・ソシアリスム 4.冷たい雨に撃て〜 5.ゲスト 6.ナイト・アンド・デイ 7.アウトレイジ 8.テトロ 9.ブンミおじさん 10.アンストッパブル +何も変えてはならない …

ポルトガル映画祭覚書〜『トラス・オス・モンテス』を中心に

アントニオ・レイス『トラス・オス・モンテス』★★★★☆ 京都駅ビルシネマで開催された「ポルトガル映画祭2010」について。詳しいレビューを書く気力はないので、それは他の優秀なブロガーさんの記事に任せることにして、次に神戸アートビレッジで上映されると…

試訳(4)

(承前) ☆ ☆ ☆ 『四枚の羽根』が出版される1902年までに、映画は、キネトスコープ、テアトログラフ、アニマトグラフといった様々な名前で、イギリス中で上映されるようになっていた。1905年、プロデューサーのセシル・ヘップワースが、一巻ものの画…

試訳(3)

(承前)だがしかし、彼らが未来についていかに無知だったにせよ、観客である君は、彼ら以上に、自分の来し方について無知なのだ。もしも『四枚の羽根』や『カーツーム』との出会いのごとき文化的事件がなかったなら、君は果たして、スーダンの問題や、そも…