明るい部屋:映画についての覚書

日々の映画鑑賞と研究の記録、最新DVD情報などなど。ときどき書評めいたことも。


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神戸映画資料館「連続講座 20世紀傑作映画再(発)見」第15回
国辱映画『チート』とサイレント時代の知られざるデミル
詳細はここで。

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評価の目安:

★★★★(大傑作、あるいは古典)
★★★(傑作、あるいは必見)
★★(見たほうがいい)
★(興味深い)

(基本的に、興味のない映画はここでは取り上げません。なので、ここで話題にしている時点で、それなりに見る価値はある作品であるといえます。)

書物

ロブ=グリエの余白に

物欲というのは金のないときにかぎってむらむらと湧いてくるのか、最近ほしいものがいろいろあって困ってしまう。ソフトバンクの春モデルで発売されることになっている Nokia の x02nk は、ソフトバンクになってはじめて心からほしいと思ったモデルで、これ…

デルモア・シュワルツ『夢の中で責任がはじまる』

Delmore Schwartz, In Dreams Begin Responsibilities and Other Stories とりあえず、表題作の "In Dreams Begin Responsibilities" を読む。自分の父と母が結婚する前(つまりは自分が生まれる前)のある日の光景を、語り手が、夢でも見るように映画館で見…

トーマス・ベルンハルト『消去』など

映画『アイ・アム・レジェンド』の原作は、わたしが大好きな小説の一つで、前にもこのブログで通りすがりにふれたことがあった。そのときは、ウィル・スミス主演のリメイクがつくられていることはまだ知らなかったと思う。そのリメイク作品がそろそろ公開さ…

『宮川淳 絵画とその影』

『宮川淳 絵画とその影』 [大人の本棚] 本日発売。宮川淳、読まれてるのか? わからない。 [「白日の中のこの影。絵画は否定し、消去することはできるだろう。だが、芸術はそのとき、まさしく、いよいよその影をあらわにする。」 近現代美術史からポスト構造…

アイザック・アシモフ『コンプリート・ロボット』

アイザック・アシモフ『コンプリート・ロボット』 周知のごとく、ロボットという言葉が最初に登場するのは、チェコの作家カレル・チャペックの戯曲『RUR――ロッサム万能ロボット会社』においてである。この言葉は、チェコ語の robota(強制労働)、robotik…

古井由吉『野川』

だれも教えてくれなかったので、今日気づいたのだが、いつのまにか古井由吉の『野川』が講談社から文庫で出ていた。しかも、講談社文芸文庫ではなく、講談社文庫からというから、これは奇跡だ(700円ぽっきりで手に入ります)。しかし、1、2年もしない…

『なぜ、植物図鑑か―中平卓馬映像論集』

最近、わけあって、女が書いた文章を集中的に読んでいる。女性作家の書いたものというのではなくて、語り手が女性という設定の文章、できれば手紙(あるいは手紙体の小説)をまとめて読んでいるのである。女のエクリチュールというやつだ。翻訳だとわからな…

で、結局、『国民の創生』は何分なの?

サイレント映画の上映時間を調べるのは意外と難しい。資料によって上映時間がまちまちなのである。トーキー映画の場合も、劇場公開版とその後編集されたディレクターズ・カット版などといったように、いくつかヴァージョンが存在することがあるが、それはど…

P・D・ジェイムズ『女には向かない職業』

今朝から一度もお日様を見ていない。もう8時になるのにあたりは薄暗く、細かい雨がしとしとと降り続いている。まったく、朝から気が滅入るぜ。 ☆ ☆ ☆ 朝といえば、最近、P・D・ジェイムズの An Unsuitable Job for a Woman(『女には向かない職業』)を読み…

『内部の人間の犯罪 秋山駿評論集』

京都駅に新しくできたビッグカメラで新型 iPod nano の実物を見てきた。写真ではちょっともっさりしているように見えたが、実物は、めちゃくちゃ薄いし、小さいし、かっこいい。ますますほしくなった。 ☆ ☆ ☆ 前々から、秋山駿の『内部の人間』が文庫になれ…

ディーン・クーンツ『雷鳴の館』を読む

ディーン・クーンツ『雷鳴の館』(扶桑社ミステリー文庫) スーザンはリモコンでテレビをつけた。次々とチャンネルを流していき、はじまったばかりの古い映画を見つけた。スペンサー・トレーシーとキャサリン・ヘップバーン主演の〈アダムの肋骨〉だ。以前に…

『J’sミステリーズKING & QUEEN 海外作家篇』

相川司、青山栄 (編集) 『J’sミステリーズKING & QUEEN 海外作家篇』 ミステリー作家辞典風に書かれた海外ミステリーのブックガイド。ミステリー読本としてはなかなかのできだ。中身は、「本格」「サスペンス」「ハードボイルド」といったぐあいにジャンルご…

『悪魔が映画を作った』

恥ずかしながら、小沼丹が推理小説を書いてたことを昨日はじめて知った。しかも文庫本で出ていたとは。タイトルは『黒いハンカチ』。女学院の女教師が謎を解決してゆくという趣向らしい。ニシ・アズマという名前がいいではないか。小説の出来の9割は主人公…

二つの半島

村上龍の『半島を出よ』がやっと文庫になった。これで貧乏人のわたしにも手が届く。 「まさか村上龍で対談する日が来るとは思わなかった」と、松浦寿輝はこの本が出たとき回りくどいほめ方をしていた。一方、浅田彰は、「出来の悪いトム・クランシー」と評し…

小林信彦『面白い小説を見つけるために』

ベルイマンに続いてミケランジェロ・アントニオーニも亡くなったというニュースを聞いて、なにかの間違いだろうとしばらく信じられずにいたのだが、どうやら本当に死んでしまったらしい。この二人が、ほぼ時を同じくして亡くなったことに、たんなる偶然以上…

『サバイバー』『シグルイ』

イングマール・ベルイマン監督が亡くなったことを、今朝のニュースで知る。フランスの俳優、ミシェル・セローも昨日亡くなった。出演作品は数多いが、『検察官レイプ殺人事件』や『死への逃避行』などのクロード・ミレール作品が、わたしにはとくに思い出深…

『ブレヒトの映画・映画論』『ペドロ・コスタ 世界へのまなざし』ほか

リリアン・J・ブラウン「The Cat Who Came to Breakfast」を読みはじめる。シャム猫ココが鋭い勘で事件を解決してゆく人気ミステリー・シリーズの一冊だ。このシリーズに挑戦するのは初めてである。「猫の文学──猫本大全集」などというページを作って公開し…

野崎歓『われわれはみな外国人である──翻訳文学という日本文学』

大の映画好きでもあり、名翻訳家でもあるフランス文学者、野崎歓氏の集大成ともいえる分厚いエッセイ集『われわれはみな外国人である──翻訳文学という日本文学』が出ました。

新作映画公開情報〜『僕のピアノコンチェルト』ほか

『オフサイド・ガールズ』 監督:ジャファル・パナヒ 出演:シマ・モバラク・シャヒ/サファル・サマンダール 内容:イランでサッカーは、国民的スポーツといっていいほどの大人気。しかし、女性がスタジアムで男性のスポーツを観戦する事は法律で禁止されて…

映画・戦争・都市について考えるためのプチ・ブックガイド

訳あって、戦争映画のことを調べている。まずは図書館で調べてみたのだが、役に立ちそうな日本語の文献はほとんどなかった。まあ、最初からわかっていたけれど。武器オタクが書いた本とか、「映画で読み解く現代史」とかいったたぐいの本ばかりで、戦争映画…

リチャード・アダムズ『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』

昨日のブログのなかで、リチャード・アダムズ著『ウォーターシップ・ダウンのウサギたち』のリンクが間違ってました。すいません。上の単行本と同じ評論社から文庫本も出ていますが、20年以上前に出版された本なので、いま現在、上下巻を新品でそろえるのは…

ジャック・ロンドンの小説〜『死の同心円』『殺人株式会社』

別に理由はないが、講談社英語文庫でジャック・ロンドンの『The Call of the Wild』を読み始める。近くの図書館に申し訳程度においてある洋書のなかで読みたいのはこれだけだったので、借りてきたのだ。やっぱり動物ものはいいねェ。平凡な人生を生きている…

金井美恵子・金井久美子『楽しみと日々』、フェルナンド・ペソア『不安の書』など

最近しばらく大きな書店をじっくり見て回ることがなかった。昨日、Planet+1 でストローブ=ユイレの映画を見たついでに、旭屋と紀伊国屋をぶらりと歩いてきた。『あの彼らの出会い』にいたく感動したので、さっそくまだ読んでいなかったパヴェーゼの『故郷』…

映画新刊本案内〜コリン・マッケイブ『ゴダール伝』

前から出るという話は聞いていた、コリン・マッケイブによるゴダールの伝記『ゴダール伝』が、いよいよ明日出版される(書店には、もう並んでいるのかもしれない)。わたしは基本的に芸術家の伝記のたぐいにはあまり興味がない人間である。トッド・マッカー…

『煙か土か食い物』

長年の肩こり、膝とかかとの痛み、背筋がゆがんでいるような違和感。近くの病院で見てもらう。最近新しく建てましされたその巨大総合病院は、いろんな点で行き届いて、サービス的には申し分なく、ブログでけちをつけられそうなところがなかった。受付さえす…

今村仁司『アルチュセール』

今村仁司、死んでいたのか。今月の5日に亡くなっていたらしい。65歳。若いね。正直いって、わたしにとって特に重要な人物ではなかったけれど、80年代にフランス現代思想を日本に紹介するに当たって一定の影響を与えた人だったと思う。その意味では、学生時代…

ジム・トンプスンの『残酷な夜』と『荒涼の町』が文庫化

舞城王太郎の『煙か土か食い物』を読み始める。なんじゃこりゃ! まだ20ページも読んでいないのだが、これがとりあえずの感想だ。良くいえば破天荒、悪くいえばめちゃくちゃな文体。がさつで野蛮そうな語り手=主人公は、ミッキー・スピレインのハードボイル…

アーシュラ・K・ル=グウィン『所有せざる人々』

アーシュラ・K・ル=グウィン『所有せざる人々』 フェミニストSFの古典『闇の左手』と並ぶル・グィンの代表作のひとつ。今頃になってペーパーバックで読む。「ぼくの好きなル・グィンは『辺境の惑星』やこの短編集『風の十二方位』を書いた、少女SF作家…

パスカル・ボニゼール『歪形するフレーム』

ルペンが大敗したのはよかったが、かといってサルコジの大統領姿は見たくないな・・・。しかし、そうなるんだろうか。 パスカル・ボニゼールの『歪形するフレーム ─絵画と映画の比較考察─』を読み始める。やっぱり梅本洋一の訳は読みにくい。できれば原書で…

"The Witness for the Prosecution"

この前ふれたアガサ・クリスティの短編集 "The Witness for the Prosecution" は意外なほど面白かった。ひょっとしたらこの人は短編のほうが面白いのかもしれない。それにしてもアガサ・クリスティなんて読むのは何年ぶりだろうか。ミステリー・マニアという…